訪日旅行者を地方へ呼び込む動画戦略
concept
この動画のコンセプトは
「From Osaka to Kochi」大阪から高知へ
日本の多くの自治体が、観光客誘致に苦戦している。
とりわけ外国人観光客は、東京、大阪、京都など
誰もが知っている日本のイメージに当てはまり、
アクセスしやすく、便利がよく、わかりやすい観光地に集中しがちだ。
高知県としては、
大阪から少し足を伸ばせば行ける距離ということをまず認知してもらいたい。
そして、海、山、川、どこをとっても唯一無二の絶景スポットの宝庫ということ。
日本のディープな自然を求めてやってくる外国人観光客や、
関西圏からの日本人観光客のリピーターが多く通う実績もあり、
きてもらえればわかる高知県の良さを、認知されづらい。届かない。
というじれったさがあった。
そこで、今回の動画のコンセプト「From Osaka to Kochi」となる。
大阪から高知へのルートを紹介することが目的であり、
ただ綺麗な場所を見せる従来の観光地アピール動画にはしたくない。
という要望があった。
そして、キーワードを
「Japan’s best kept secret」
とし
視聴者に「あなたはまだ本当には知らないのだ。見つけてごらん。本当の日本を」と挑発する。
実際に動画の中で、ごく普通の大阪観光を楽しんでいる訪日旅行者へ
このようなメッセージが届く。
「Search for japans best kept secret and find happiness.」
「日本の最高の秘密を探しだし、幸せをみつけよう」
(なんと、食べようとしたたこ焼きの中に紛れて!)
このような、少し不思議で
ユーモアとストーリー性のある動画になった経緯を紹介したい。
Planning
実は最初に出した企画書では動画の絵コンテは全く違っていた。
わかりやすく大阪と高知の観光地を対比して見せ、
都会と自然、華やかさと素朴さ、賑やかさと静けさ、
人工的なアクテビティと自然体験とをわかりやすく表現しようとした。
「都会もいいけど、田舎もいいよ!」というように。
とても良いように思えたのだが、
高知県の担当者からはそうではないという答え。
求められていたのは
「何か不思議な力で高知県に引き寄せられた」
「いつの間にか辿り着いていた」
という魔法のようなファンタジー要素だった。
確かにそんな不思議な秘境の魅力に溢れる高知県だが、
日本の秘密にふさわしい場所と体験に何を選び、
どうやって導いていくのか。
わたしたちは頭を悩ませた。
ファンタジーと冒険。童心に帰る場所。
実は四万十川のある四万十市立 中村西中学校では
生徒が開校以来続けている伝統の「筏(いかだ)の川下り」がある。
自分たちで筏を組み、川下りをするのだ。なんという冒険!
川下り・ラフティングを売りにしている観光地は数あれど
筏での川下りを体験できるところはそうそうないだろう。
幼い頃、ワクワクしながら読んだ物語の数々、
「十五少年漂流記」「トムソーヤの冒険」
「ロビンソン・クルーソー」「シンドバットの冒険」
海や川を舞台にした冒険に筏はつきものであり、
冒険の象徴であり、憧れでもある。
それを日本最後の清流と言われる四万十川で体験する。
ゴールは決まった。
では不思議な力で高知県に導く方法はどうするか?
その最初のアイテムとなったのがフォーチュンクッキーならぬ
フォーチュンたこ焼きだった。
このメッセージで登場人物と視聴者に
「大阪ではないどこへいくのか?」という興味を持たせる。
そして次のアイテム、麦わら帽子が登場する。
都会の風景には、まるでなじまない。
動画の中では、登場人物が移動するごとに
筏での川下りに必要なアイテムを手に入れていく。
麦わら帽子
ライフジャケット
ウォーターバッグ(防水リュック)
パドル
旗
それは突然現れたり、誰かからもらったりする。
すべてが揃った時、自分と同じ格好をした仲間が現れて、
目的地に辿り着いたことがわかる。
このようにして工程も楽しんでもらう演出で
最後まで試聴者を離脱させない工夫をした。
ロケ地は以下の通り。
関西国際空港
道頓堀
瀬戸大橋
高知城と日曜市
雲の上の図書館(檮原町立図書館)と雲の上のギャラリー
入野海岸
四万十川(津大橋〜岩間沈下橋)
高知県のインバウンド動画だが、
個の自治体の動画としては珍しく、尺の半分は高知県ではない
大阪や瀬戸大橋(岡山〜香川)が入っている。
大胆な内容だが、
訪日旅行者へ東京〜関西のゴールデンルートに絡めて魅力をアピールし、
滞在期間をのばしてもらう着地型観光へ結びつける重要なポイントだ。
shooting
撮影は6日間で行った。
crew
撮影班は5人で。
出演者は4人
監督・演出・カメラは1人3役
四万十川で撮影する1日のみ撮影助手が加わった。
監督・演出・カメラマンを一人でこなすことで
大幅なコストダウンと効率化をはかることができた。
また、企画段階からも現場でも、クライアントからの提案に臨機応変に対応できる。
撮影中に起きたアクシデントにも、時間が限られている中で
新しいアイディアを出すことができた。
監督・演出・カメラマンの3つの視点から複合的また多面的に考えをまとめ、
提案できることはとても大きな武器と言えるだろう。
またキャストとして最後に川下りの仲間になる3人は、
高知県とやまとごころの職員で
実はアイテムを手に入れるシーンでもさりげなく登場している。
(探してみてください!)
使用機材はCanon C70 (Cinema Raw LT)とドローンはDJI Mini Pro 3。
四万十川の雄大さをみせるために川下りシーンではドローンを使用。
民家や橋などの人工物が何も映らない
"Japan’s best kept secret”「四万十川」を印象付けるショットを狙った。
もう1ヶ所、瀬戸大橋でもドローンを使った。
夜の大阪から、明るい空と海の開放感いっぱいのショットは
高知への旅がはじまる良い切り替えになった。
Editing
天候の都合で各スポットの撮影日の間隔が
大幅に離れてしまったため、編集と撮影は同時進行で行った。
撮影最終日から約1ヶ月半でフルサイズとSNS用ショートサイズを納品した。
編集では絵コンテはあったものの、ユーモアがあり、
映画の予告のようなリズム感と視聴者の心を掴む表現に苦戦した。
どこまで流れを追って見せるのか。
なるべく短く作りたい中で、
視聴者の想像力に委ねて思い切って削除するシーン、
ストーリーの要点をじっくりと見せるシーンとのメリハリと
観光のPR動画という側面も忘れずに落とし込むバランスが必要だった。
また、ノンバーバルに対応するために極力セリフを使わず
説明テロップは最小限の英語表記に留めた。